「乾燥肌にはヒルドイドがいいって聞くけど、顔に塗っても平気?」 「ヒルマイルドを買ってみたけど、副作用で赤くなったりしないか心配…」
SNSや美容雑誌で「最強の保湿剤」と謳われるヘパリン類似物質。しかし、医薬品成分である以上、ただの化粧水感覚で使うことには不安もありますよね。
この記事では、私たちサイエンスライターが、医学論文や臨床データに基づき「顔への使用」に関する科学的な結論を解説します。噂に惑わされず、正しく使えばあなたの肌は劇的に変わる可能性があります。
【結論】顔への使用は「科学的に推奨」されるが、条件がある
結論から言うと、ヘパリン類似物質を顔に塗ることは医学的に推奨されています。実際に、多くのアトピー性皮膚炎や乾燥肌の患者に対し、顔面への塗布が処方されています。
ただし、誰でもいつでもOKというわけではありません。以下の「3つのNG条件」に当てはまる場合は、使用を避けるべきです。
- NG条件1:出血している傷口(血が止まりにくくなる可能性がある)
- NG条件2:ジュクジュクした「ただれ」(刺激になる可能性がある)
- NG条件3:進行中の「真っ赤なニキビ」(油分で悪化するリスクがある)
なぜこれらがNGなのか? その理由は、この成分が持つ「強力すぎる作用」にあります。
根拠となる「科学的研究」の全貌
ヘパリン類似物質がなぜこれほど信頼されているのか。それは、単なる保湿剤ではなく「治療薬」としてのエビデンス(証拠)があるからです。
どんな研究だったのか?:50年以上続く臨床データ
ヘパリン類似物質(Heparinoid)は、ドイツで開発され、日本でも50年以上使用されている成分です。国内の臨床試験では、乾燥肌(皮脂欠乏症)の患者に対して、角層(肌の一番外側)の水分保持機能を有意に改善することが証明されています。
驚きの検証結果と数値
ある研究では、ヘパリン類似物質配合のクリームを使用した場合、使用していない場合と比較して、角層水分量が統計的に有意に増加したというデータがあります。
- 水分保持能: 通常の保湿クリーム(ワセリンなど)は肌表面にフタをするだけですが、ヘパリン類似物質は「肌内部の保水構造」そのものを修復します。
- 血流改善: 皮膚温度の上昇や血流量の増加が認められており、これが肌のターンオーバー(生まれ変わり)を助けます。
なぜ効くのか?メカニズムをわかりやすく解説
ヘパリン類似物質には、大きく分けて「保湿」「血行促進」「抗炎症」の3つの作用があります。
細胞の中で何が起きている?:「ラメラ構造」の修復
私たちの肌の角層には、水分と油分がミルフィーユのように交互に重なり合った「ラメラ構造」というバリア機能が存在します。
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乾燥肌の人のラメラ構造は、レンガ造りの壁が崩れたようにスカスカになっています。ヘパリン類似物質は、この崩れた壁の「セメント」の役割を果たし、ラメラ構造を整えます。
イメージ: 砂漠(乾燥肌)にただ水を撒いてもすぐ蒸発しますが、ヘパリン類似物質は「オアシス(貯水槽)」を作るような働きをします。だから、長時間うるおいが続くのです。
[関連サジェストKW①] ニキビへの使用は「諸刃の剣」
検索で多いのが「ニキビに効くのか?悪化するのか?」という悩みです。ここには科学的なジレンマがあります。
ニキビ跡には◎、進行中のニキビには△
- ニキビ跡(赤み・凹凸): 「血行促進」と「抗炎症」作用により、ニキビ跡の修復を早める効果が期待できます。実際に、ケロイド(盛り上がった傷跡)の治療にも使われる成分です。
- 進行中のニキビ(白ニキビ・赤ニキビ): 注意が必要です。特に「クリームタイプ」や「軟膏」は油分が多く、毛穴を塞いでアクネ菌を増殖させるリスクがあります。ニキビができやすい人が顔に使う場合は、油分の少ない「ローションタイプ」を選ぶのが科学的な正解です。
[関連サジェストKW②] 副作用と正しい使用法
医薬品である以上、副作用ゼロではありません。しかし、過度に恐れる必要もありません。
副作用のリスク:赤みとかゆみの正体
主な副作用として報告されているのは、以下の症状です(発現率は数%以下とされています)。
- 皮膚刺激感(ピリピリ)
- 潮紅(赤くなる)
- そう痒感(かゆみ)
これらは主に「血行促進作用」が効きすぎた結果として現れることがあります。特に、お風呂上がりなど血行が良い時に塗ると、顔がほてって赤くなることがあります。これは効いている証拠でもありますが、不快な場合は使用量を減らすか、使用を中止してください。
失敗しない使い方:魔法の単位「1FTU」
効果を出すためには、塗る量が重要です。医学的に推奨されているのが「1FTU (Finger Tip Unit)」です。
- チューブタイプの場合: 人差し指の第一関節までの長さ(約0.5g)。
- この量で: 大人の手のひら2枚分の面積に塗れます。
顔全体なら、これより少し少なめでも十分です。ティッシュが張り付くくらい「しっとり」塗るのがコツです。強く擦り込まず、優しくなじませましょう。
よくある質問 (Q&A)
Q1. 毎日のスキンケアとして、ずっと使い続けても大丈夫?
A. 基本的には問題ありません。 ただし、あくまで「治療」を目的とした成分です。肌の調子が良くなったら、一般的な化粧品(セラミド配合など)に戻すのも賢い選択です。長期間漫然と使用するのではなく、肌の状態を見ながら使いましょう。
Q2. 化粧水の前と後、どっちに塗るべき?
A. 基本は「洗顔後すぐ」または「化粧水の後」です。 水性のローションタイプなら洗顔後すぐ、油分の多いクリームタイプなら化粧水で水分を補給した後に「フタ」として使うのが効果的です。処方薬の場合は医師の指示に従ってください。
Q3. 「ヒルマイルド」などの市販薬と、処方薬の「ヒルドイド」は違うの?
A. 有効成分は同じです。 どちらも「ヘパリン類似物質」を0.3%配合しています。ただし、添加物(基剤)の配合が異なるため、テクスチャや使用感が違うことがあります。市販薬は健康な肌への使用を想定して作られています。
まとめ
ヘパリン類似物質は、科学的根拠に基づいた「肌のバリア修復材」です。
- 顔使用: 基本的にOK。保湿効果はトップクラス。
- 注意点: 出血、ただれ、進行中のニキビには避ける。
- 副作用: 血行が良くなりすぎて赤くなることがある。
「乾燥して肌が痛い」「粉を吹いて化粧が乗らない」という悩みがあるなら、まずは1週間、夜のケアに取り入れてみてください。翌朝の肌の「柔らかさ」に、きっと驚くはずです。
参考文献
- Kamata, Y., et al. (2019). A topical heparinoid-containing product improves epidermal permeability barrier homeostasis in mice. Experimental Dermatology. [PubMed]
- Japan Dermatological Association. (2021). Atopic Dermatitis Guidelines.
- Maruho Co., Ltd. (2023). Hirudoid Interview Form.
- Kikuchi, K., et al. (2021). Efficacy of Heparinoid Cream Containing Pseudo-Ceramide for Remission of Atopic Dermatitis. Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology.


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