「どんなにケアしてもニキビが治らない…」 「スキンケアの直後、なぜか顔が赤黒くくすんで見える…」
もしあなたがこんな悩みを抱えているなら、その原因は、化粧品の王様「グリセリン」にあるかもしれません。
グリセリンは「最も安全で優れた保湿剤」として、ほぼ全ての化粧品に配合されています。しかし、SNSを中心に「グリセリンフリーにしたら肌が白くなった」「ニキビが消滅した」という報告が後を絶ちません。
これは単なるプラシーボ(思い込み)なのでしょうか?
いいえ、実は最新の皮膚科学と物理学の視点から見ると、「グリセリンが合わない肌」が存在する科学的な理由がはっきりと説明できるのです。この記事では、論文データに基づき、グリセリンフリーの真実を解き明かします。
【結論】「アクネ菌のエサ遮断」と「光学的なトーンアップ」効果は実在する
結論から言うと、グリセリンフリーが効果を発揮するのは、以下の2つの科学的メカニズムによるものです。
- 生物学的理由: 特定のアクネ菌株にとって、グリセリンは「増殖のための燃料」となり、炎症を悪化させる場合がある。
- 物理学的理由: グリセリンの高い屈折率が、肌の「アラや赤み」を透けさせて目立たせている(濡れ色現象)。
つまり、「肌質が変わった」のではなく、「悪化因子を取り除き、見た目のフィルターを変えた」結果、肌が白くきれいに見えるのです。
根拠となる「科学的研究」の全貌
1. ニキビの餌?:「発酵」のメカニズム
長年、グリセリンは「ノンコメドジェニック(毛穴を詰まらせない)」とされてきました。しかし、微生物学の研究では別の側面が見えています。
Frontiers in Microbiology などの研究によると、皮膚常在菌であるアクネ菌(Cutibacterium acnes)の一部は、グリセリンを分解(発酵)してエネルギー源にする能力を持っています。
- 研究データ: アクネ菌がグリセリンを代謝すると、短鎖脂肪酸などが生成されます。さらに、グリセリン存在下では、炎症を引き起こす物質(IL-8などのサイトカイン)の産生が増加したという実験結果もあります。
イメージ: 多くの人にとってグリセリンは無害な「水」ですが、脂性肌でアクネ菌が多い人にとっては、バイキング形式の「高カロリーな砂糖水」のようなものです。エサが豊富にあれば、菌は元気に活動し、ニキビが治りにくくなります。
2. なぜ顔が黒くなる?:「屈折率」のいたずら
「グリセリンフリーにしたら色白になった」という現象。これはメラニンが減ったわけではなく、光の屈折率(Refractive Index)の変化で説明がつきます。
- 水の屈折率: 約1.33
- 皮膚(角層)の屈折率: 約1.55
- グリセリンの屈折率: 約1.47(高濃度の場合)
グリセリンは水よりも屈折率が高く、肌(角層)に近い性質を持っています。これを塗ると、肌表面の光の乱反射が減り、光が肌の奥まで入り込みやすくなります。これを物理学で「濡れ色効果(Wetting effect)」と呼びます。
例えるなら「濡れたTシャツ」です。 乾いた白いTシャツ(乱反射が多い)は白く見えますが、水に濡れると透けて肌の色が見え、色が濃く(暗く)見えますよね? グリセリン高配合の化粧水を使うと、これと同じ現象が顔で起き、肌の奥の「赤み」や「くすみ」が透けて強調されてしまうため、顔が赤黒く見えるのです。
[関連サジェストKW] グリセリンフリーの始め方と注意点
「じゃあ、すぐに全部やめよう!」と思う前に、重要なデメリットも知っておく必要があります。
副作用:強烈な「乾燥」との戦い
グリセリンは「吸湿性」において右に出るものがいないほど優秀な保湿成分です。これを抜くと、当然ながら保湿力はガクンと落ちます。
失敗しない代用品の選び方: 乾燥を防ぐために、別の保湿成分がメインのものを選びましょう。
- BG(ブチレングリコール): さっぱりしているが、刺激が少なく安全。
- 糖類(トレハロース、キシリトール): べたつきが少なく、水分を抱え込む力が強い。
- セラミド・ヒアルロン酸: グリセリンの代わりにこれらを高配合したものを選ぶ。
よくある質問 (Q&A)
Q1. 完全にグリセリンを排除しないとダメですか?
A. 「成分表示の3番目以降」ならOKな場合が多いです。 成分表示は配合量の多い順に書かれています。水、BGの次にグリセリンがある程度なら影響は少ないですが、水の次がすぐグリセリン(高濃度)のものは避けてみてください。
Q2. 乾燥肌ですがニキビもできます。どうすれば?
A. 部分使いがおすすめです。 ニキビができやすいTゾーンはグリセリンフリー、乾燥する頬や目元はグリセリン配合、と使い分けるのが最も賢い方法です。
まとめ
グリセリンフリーは、万人に勧められる方法ではありませんが、以下の悩みを持つ人には「特効薬」になる科学的可能性があります。
- 対象: 脂性肌で、何をやってもニキビが治らない人。
- 対象: スキンケア直後に顔が赤黒く、ドス黒く見える人。
- 対策: まずは夜だけ、グリセリンフリーの化粧水に変えてみて、翌朝の肌の「白さ」と「ニキビの赤み」を観察してみてください。
参考文献
- Christensen, G. J. M., et al. (2016). Antagonism between Staphylococcus epidermidis and Propionibacterium acnes and its importance for the skin microbiome. Frontiers in Microbiology.
- Tuchin, V. V. (2005). Optical clearing of tissues and blood using the immersion method. Journal of Physics D: Applied Physics. (グリセリンの光学的特性に関する研究)
- Scholz, C., et al. (2019). Composition of the Biofilm Matrix of Cutibacterium acnes Acneic Strain RT5. Frontiers in Microbiology.
※グリセリンの「屈折率」が実際にどう光を変えるのか、視覚的に理解したい方はこちらの実験動画が参考になります。
What Is Glycerin’s Refractive Index? この動画では、グリセリンが光をどう曲げるかを実験しており、なぜ肌に塗ると透明度が増して「奥が透けて見える(黒く見える)」のか、その原理が直感的にわかります。


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