「HIFU(ハイフ)って、顔の中で肉を焼いているのと同じって本当?」
「聞くだけで痛そうだけど、なぜそれでリフトアップするの?」
SNSなどで囁かれる「ハイフ=焼肉説」。
美容医療の表現として少々過激に聞こえますが、科学的な視点で見ると、この例えは「ほぼ正解」です。
HIFUのたるみ改善効果は、皮膚の奥にある筋膜を「高熱で焼き縮める」ことで物理的に引き締め、さらにその火傷を治そうとする人体の修復力を利用して成り立っています。
この記事では、HIFUが顔の内部で引き起こしている「熱凝固」のメカニズムと、なぜ表面はやけどせずに中身だけを焼くことができるのか、その科学的根拠について解説します。
【結論】生肉を焼くとキュッと縮む原理と同じ
この記事の要点まとめ
- HIFUは超音波を一点に集め、皮膚内部(SMAS筋膜)を65〜75℃の高温にする技術。
- タンパク質(肉)は熱を加えると縮む性質があり、これにより土台から物理的に引き締まる。
- 焼かれた組織が治る過程(創傷治癒)で、大量のコラーゲンが生成される。
- エステ用のHIFUは出力が不安定で事故が多発しているため、現在は事実上禁止されている。
メカニズム:電子レンジではなく「虫眼鏡」
「顔を焼く」といっても、顔全体を温めるわけではありません。HIFU(High Intensity Focused Ultrasound:高密度焦点式超音波)の仕組みは、理科の実験で使った「虫眼鏡」と同じです。
表面スルーで「一点」だけ焼く
太陽の光を虫眼鏡で一点に集めると、紙が焦げますよね。
HIFUもこれと同様に、超音波を一点に集中させることで、皮膚の表面にはダメージを与えず、狙った深さ(皮下組織や筋膜)だけに熱エネルギーを発生させます。
この焦点部分の温度は65〜75℃に達します。これはタンパク質が変性し、確実に細胞が壊れる(凝固する)温度です。
効果の正体:2段階の「熱変性」プロセス
HIFUの効果は、施術直後と数ヶ月後の2回に分けて現れます。それぞれ理由が異なります。
| 段階 | 現象(例え) | 科学的変化 |
|---|---|---|
| 直後 (物理的短縮) |
焼肉 生肉を網で焼くと、キュッと縮んで一回り小さくなる。 |
熱エネルギーにより、緩んだSMAS筋膜(コラーゲン繊維)がギュッと収縮し、即時的なリフトアップ効果が生まれる。 |
| 1〜3ヶ月後 (創傷治癒) |
怪我の修復 擦りむいた傷が治る時に、新しい皮膚ができる。 |
熱で破壊された組織を治そうとして、線維芽細胞が活発になり、大量の新しいコラーゲンとエラスチンが生成される。肌にハリが出る。 |
ターゲットとなる「SMAS筋膜(スマスきんまく)」は、顔の皮膚を支える土台です。ここを引き締めることは、洋服のシワを伸ばすのではなく、「洋服のサイズそのものを小さく仕立て直す」ような強力な効果があります。
「焼く」からこそのリスクと副作用
「肉を焼く」ほどの熱を加える以上、当然ながらリスクも存在します。解剖学的な知識がない施術者が行うと、取り返しのつかない事故につながります。
1. 神経損傷(顔面神経麻痺)
顔には絶対に焼いてはいけない「神経の通り道」があります。
誤ってそこに照射してしまうと、神経が熱で麻痺し、口が歪む、目が閉じにくいといった障害が残る可能性があります(※通常は数ヶ月で回復しますが、非常に危険です)。
2. 頬コケ(脂肪萎縮)
HIFUの熱は脂肪細胞も破壊します。
「小顔になりたい」からといって、元々脂肪が少ない頬骨の下などに照射しすぎると、脂肪が溶けてげっそりとコケてしまい、かえって老けて見える「ムンク状態」になるリスクがあります。
【重要】エステHIFUの危険性
国民生活センターから何度も注意喚起が出ていますが、HIFUは「細胞を破壊する行為」であるため、本来は医療機関でしか行えません。
エステサロンにあるHIFU機器は出力が不安定だったり、解剖学の知識がないスタッフが施術したりすることで、神経障害や火傷のトラブルが多発しています。絶対に避けるべきです。
よくある質問(Q&A)
| Q. 痛みはありますか? | 骨に響くような鈍い痛みや、チクチクした熱さを感じることが多いです。全く痛くないHIFUは出力が低すぎて効果がない可能性があります。「痛い=効いている」側面もある治療です。 |
| Q. 何回やればいいですか? | 効果のピークは2〜3ヶ月後で、半年〜1年ほど持続します。組織の修復期間が必要なため、最低でも半年は空けるのが一般的です。やりすぎは皮膚が硬くなる原因になります。 |
| Q. サーマクールとの違いは? | HIFUは「点」で筋膜(土台)を焼いて引き上げますが、サーマクール(高周波)は「塊」で脂肪層全体を焼いて引き締めます。 ・HIFU:リフトアップ(位置を上げる) ・サーマクール:タイトニング(ボリュームを縮める) という使い分けが一般的です。 |
まとめ
HIFUが顔を引き締める理由は、オカルトでも魔法でもなく、「タンパク質の熱凝固(焼肉現象)」と「創傷治癒(怪我の回復)」という、極めて物理的かつ生物学的な反応によるものです。
「顔の中で肉を焼く」という表現は怖いかもしれませんが、正しく制御された医療HIFUであれば、メスを使わずに土台からたるみを治せる強力な武器になります。ただし、それは「医療の知識」があって初めて安全に行える行為であることを忘れないでください。
次の一手
HIFUで土台を引き上げた後は、肌表面のハリや毛穴ケアも重要です。同じく「熱」を利用して肌を入れ替える「フラクショナルレーザー」や「ポテンツァ」との違いについても確認しておきましょう。


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