「小顔になろうとして変顔をしていたら、眉間のシワが深くなった」
「ほうれい線を消す体操を頑張ったら、余計に線がくっきりした気がする」
YouTubeやSNSで流行している「顔ヨガ(フェイスエクササイズ)」。お金もかからず手軽にできる美容法ですが、実は「やり方を間違えると、確実にシワを刻んで老化を加速させる」という恐ろしいリスクをはらんでいることをご存知でしょうか。
しかし一方で、「1日30分の顔トレで見た目年齢が約3歳若返った」という信頼性の高い医学論文も存在します。
この差は一体どこにあるのか?
この記事では、皮膚科学の研究データに基づき、顔ヨガで「若返る人」と「逆に老けてしまう人」の決定的な違いと、シワを作らずに筋肉だけを鍛える科学的なメソッドについて解説します。
【結論】「皮膚を折り畳む」か「内側から押し出す」かの違い
この記事の要点まとめ
- ノースウェスタン大学の研究により、正しい顔面エクササイズは「頬のボリューム」を増やし、若返り効果があることが証明されている。
- しかし、自己流で皮膚を寄せる(シワを作る)動きを繰り返すと、その線が「表情ジワ」として定着し、老け顔を作る。
- 老ける人は「表面の皮膚」を動かし、若返る人は「土台の筋肉」だけを動かす。
- 顔の筋肉は「鍛えるべき場所」と「緩めるべき場所」が違う。
根拠となる論文:本当に顔ヨガで若返るのか?
「変顔をするだけで若返るなんて迷信では?」という疑問に対し、科学的な回答を出した有名な研究があります。
JAMA Dermatology掲載の論文(2018)
米ノースウェスタン大学の研究チームは、40〜65歳の女性を対象に、専門家の指導下で「1日30分の顔面エクササイズ」を20週間継続させる実験を行いました。
- 結果:皮膚科医による評価で、平均の見た目年齢が50.8歳から48.1歳へと、約3歳若返った。
- 要因:特に「頬(中顔面)」の筋肉が肥大し、加齢で萎んでしまった脂肪のボリュームを筋肉が補ったことで、パンッとしたハリが戻ったため。
つまり、「筋肉を肥大させて、肌を内側からテントのように押し上げる」ことができれば、顔ヨガは医学的に正解なのです。
なぜ「顔ヨガで老ける(シワが増える)」のか?
一方で、自己流で行って失敗する人が後を絶ちません。その原因は、顔の筋肉と皮膚の構造的特徴にあります。
顔の筋肉は「皮膚」にくっついている
腕や足の筋肉は「骨と骨」をつないで関節を動かしますが、顔の筋肉(表情筋)の多くは「骨と皮膚」または「皮膚と皮膚」をつないでいます。
そのため、筋肉を動かすとダイレクトに皮膚が引っ張られ、折り目がつきます。これが「表情ジワ」です。
| 危険なNG顔ヨガ | 肌へのダメージ |
|---|---|
| 目をギュッとつむる | 目尻のカラスの足跡、眉間の縦ジワが深く刻まれる。 |
| 口をすぼめる(ウの口) | 口周りの梅干しジワ(放射状のシワ)の原因になる。 |
| おでこを上げて目を見開く | 額の横ジワが定着する。眼瞼下垂の人がやりがちな癖でもある。 |
紙を何度も折り曲げると線が消えなくなるのと同じで、乾燥した肌でこれらの動作を繰り返すことは、自らシワを刻印している作業に他なりません。
決定的な違い:「鍛える場所」と「緩める場所」
若返る人は、顔中の筋肉を闇雲に動かしたりしません。彼らは(意識的か無意識的かに関わらず)「重力に逆らう筋肉」だけを鍛え、「シワを作る筋肉」は休ませています。
1. 鍛えるべき筋肉(リフトアップ筋)
ここが衰えると顔が垂れます。積極的に動かして肥大させるべきエリアです。
- 大頬骨筋(だいきょうこつきん):口角を斜め上に引き上げる、笑顔の主役。頬の頂点を高くする。
- 眼輪筋(がんりんきん)の下側:涙袋を作る部分。ここが弱いと目の下のたるみになる。
2. 緩めるべき筋肉(シワ製造筋)
ここは普段から使いすぎて凝り固まっていることが多く、これ以上鍛えるとシワになります。マッサージやボトックスで「力を抜く」べきエリアです。
- 咬筋(こうきん):エラ張りの原因。鍛えてはいけない。
- 皺眉筋(しゅうびきん):眉間のシワを作る筋肉。不機嫌に見える元凶。
- オトガイ筋:顎の梅干しジワを作る。
特に「咬筋」や「皺眉筋」の緊張を緩めるには、ペプチド(塗るボトックス)などの成分も有効です。
「塗るボトックス」は本当か?ペプチド美容液の科学的効果
実践:シワを作らずに効かせる3つの鉄則
論文レベルの効果を得つつ、リスクを回避するための「安全な顔ヨガ」のルールです。
1. 手でシワを押さえる(フィックス)
動かす時に、他の部分にシワが寄らないように、必ず手や指で皮膚を固定します。
例:おでこを動かすなら、おでこを手で押さえてシワが寄らないようにする。
2. 保湿してから行う
乾燥した紙は折れ目がつきやすいですが、湿った紙は柔軟性があります。必ずクリームやオイルを塗って、皮膚が柔軟な状態で行ってください。
3. 「100%の力」を出さない
全力で変顔をすると、必ず余計な場所に力が入ります(代償動作)。ターゲットの筋肉だけがピクピク動く程度の「小さな動き」で十分効果があります。
よくある質問(Q&A)
| Q. EMS美顔器なら安全ですか? | 電気刺激で強制的に筋肉を動かすEMSは、自分で変な癖をつけるリスクは低いですが、やはり乾燥した状態で使うと皮膚への負担になります。また、使いすぎ(オーバートリートメント)は筋肉疲労を起こしてたるむ原因になるので、週2〜3回を守りましょう。 |
| Q. ほうれい線には「舌回し」が良い? | 口の中から舌で内側からアイロンをかけるように押す運動は、皮膚を折らずに口輪筋を鍛えられるため、比較的安全で効果的なメソッドです。ただし、やりすぎると顎関節症のリスクがあるので注意してください。 |
| Q. すでにできてしまった表情ジワは治る? | 浅いものであれば、保湿と「脱力(表情癖をやめる)」で改善します。深く刻まれた真皮レベルのシワには、レチノールなどのコラーゲン産生成分や、美容医療(ヒアルロン酸・ボトックス)の助けが必要です。 「塗るボトックス」は本当か?ペプチド美容液の科学的効果 |
まとめ
顔ヨガは、正しく行えば「メスを使わない整形」になり得ますが、間違えば「シワ刻印マシン」になってしまいます。
重要なのは、「皮膚を折り畳まないこと」と「鍛える場所と緩める場所を見極めること」です。
鏡を見て、シワが寄っているなら即ストップ。まずは筋肉を鍛える前に、不要な力を抜く練習から始めてみてください。それが「3歳若返る」ための第一歩です。
次の一手
顔のたるみは筋肉だけでなく「骨の萎縮」も原因の一つです。骨密度を保つケアや、たるみの解剖学的な原因について、さらに深く知っておくことをお勧めします。
参考文献
- Alam M, et al. Association of Facial Exercise With the Appearance of Aging. JAMA Dermatol. 2018;154(3):365-367.
- Brandt FS, et al. Hyaluronic acid gel fillers in the management of facial aging. Clin Interv Aging. 2008.


コメント