「保湿しても保湿しても、すぐに肌がガサガサになる…」
「肌荒れした時、何を使えばいいのかわからない…」
そんな悩みを抱えていませんか?世の中には「肌に良い」とされる成分が溢れていますが、本当に科学的な裏付けがあるものは意外と多くありません。
今回は、皮膚科医も注目する成分「パンテノール(プロビタミンB5)」について、信頼できる科学論文をベースに解説します。結論から言うと、パンテノールは単なる保湿剤ではありません。肌の工場を動かす「燃料」となり、傷ついたバリア機能を物理的に修復する頼もしい成分です。
難しい専門用語は使わず、中学生でもわかるように噛み砕いて解説しますので、ぜひ最後までお付き合いください。
【結論】パンテノールは「肌の修復」において科学的に推奨される
まず結論をズバリと言い切ります。
パンテノール(特に濃度5%前後のデクスパンテノール)は、単に肌を潤すだけでなく、壊れた皮膚バリア(角層)の修復速度を早め、赤みなどの炎症を鎮める効果が複数の臨床研究で証明されています。
「ワセリン」が肌に蓋をして守る「盾」だとするなら、パンテノールは内側から壁を直す「大工さん」です。肌荒れを繰り返す人にとって、これほど理にかなった成分はそう多くありません。
根拠となる「科学的研究」の全貌
では、その根拠となる有名な研究をご紹介します。これはドイツのキール大学皮膚科で行われた、非常に信頼性の高い研究です。
どんな研究だったのか?(物語風解説)
2002年、Proksch博士らの研究チームは、パンテノールの実力を測るために、あえて少し過酷な実験を行いました。
- 対象: 健康なボランティア(N=20名程度)
- 方法:
- まず、被験者の腕に「SLS(ラウリル硫酸ナトリウム)」という洗浄成分を貼り付け、人工的に肌荒れ(バリア機能が壊れた状態)を起こさせます。
- その荒れた肌に対し、片方には「5%パンテノール配合のクリーム」、もう片方には「成分を含まないただのクリーム(プラセボ)」を塗り続けました。
- その後、肌の水分が逃げていく量(TEWL)や赤みが、どれくらいのスピードで治るかを比較しました。
驚きの検証結果と数値
実験の結果、パンテノールを塗った肌は、そうでない肌に比べて圧倒的な回復を見せました。
- バリア機能の回復速度: パンテノールを塗った部位は、塗らなかった部位に比べて統計的に有意に(偶然ではないレベルで)回復が早まりました。
- 炎症(赤み)の鎮静: 肌荒れに伴う「赤み」も、パンテノール群でのみ有意な減少が見られました。
つまり、「肌が荒れてヒリヒリしている時、パンテノールを塗ると、通常よりも明らかに早く元の丈夫な肌に戻る」ということが、数値データとして証明されたのです。
なぜ効くのか?メカニズムをわかりやすく解説
なぜパンテノールには、これほど強力な修復力があるのでしょうか?その秘密は、肌の中に浸透した後の「変身」にあります。
細胞の中で何が起きている?
パンテノールが肌に塗られると、皮膚の細胞内で「パントテン酸(ビタミンB5)」という物質に変化します。そして、これが「コエンザイムA(CoA)」という重要な物質の材料になります。
これを「家の修復工事」に例えてみましょう。
- 肌荒れした状態: 台風で家の壁(皮膚バリア)が壊れ、隙間風(乾燥・刺激)が入ってくる状態。
- コエンザイムA: 壁を修理するための「大工さんのエネルギー源」や「セメントの材料」。
- パンテノールの役割: 大工さんに差し入れする「特製栄養ドリンク」。
パンテノール(栄養ドリンク)が届くと、細胞(大工さん)は元気になり、「細胞間脂質(セラミドなど)」という壁の材料を猛スピードで作れるようになります。
さらに、パンテノールには「線維芽細胞」というコラーゲンを作る工場を活性化させる働きもあり、これが傷の治りを早める大きな要因となっています。
「濃度」に関する詳細解説:何%がベスト?
「パンテノール配合」と書いてあれば何でも良いのでしょうか?実は、研究では「濃度」が鍵になることがわかっています。
多くの臨床試験(前述のProksch博士の研究や、Camargo博士の研究など)では、「1%〜5%」の濃度で顕著な効果が確認されています。
- 1%程度: 保湿効果がメイン。日常的なケアに最適。
- 5%程度: 医薬品や高機能コスメに使われる濃度。肌荒れの修復や、軽い傷の治癒促進を目的とする場合に推奨されます。
市販の化粧品を選ぶ際は、成分表示の最初の方に「パンテノール」と書かれているか、あるいは「高濃度配合」と謳われているものを探すと、より実感を得やすいでしょう。
副作用と正しい使用法
どんなに良い成分でも、リスクゼロではありません。正しく使うために知っておくべきことをまとめます。
副作用のリスク
パンテノールは非常に安全性の高い成分として知られており、敏感肌用の製品や赤ちゃんのスキンケアにも使われます。しかし、稀に以下のリスクがあります。
- 接触性皮膚炎: 極めて稀ですが、パンテノールそのものにアレルギー反応を起こす人がいます(発生率は非常に低いです)。
- ニキビへの影響: パンテノール自体はニキビのエサになりにくいですが、高濃度の製品はテクスチャが「こってり」していることが多く、油分が毛穴を塞いでニキビを悪化させることがあります。
失敗しない使い方
肌荒れ時の「守りのスキンケア」として、以下の手順をおすすめします。
- 洗顔後、すぐに塗る: 化粧水がしみる場合は、化粧水を省いてパンテノール配合のクリームや乳液を直接塗ってもOKです。
- 「蓋」として使う: さっぱり系の化粧水を使った後、水分の蒸発を防ぐために使用します。
- 部分使いも有効: 顔全体がベタつくのが嫌な場合は、皮がめくれている部分や赤みがある部分にだけ、厚めに塗ってください。
よくある質問 (Q&A)
Q1. ワセリンとパンテノール、どっちを使えばいいですか?
A. 役割が違います。「守る」ならワセリン、「直す」ならパンテノールです。 ワセリンは肌の上に強力な油膜を作り、外部刺激を完全にシャットアウトする「保護」が得意です。一方、パンテノールは肌内部に浸透してバリア機能を「修復」します。一番のおすすめは、パンテノールを塗った上から、少量のワセリンを重ねる「合わせ技」です。
Q2. ニキビができている時も使えますか?
A. 基本的には使えますが、基剤(クリームの油分)に注意してください。 パンテノール自体には抗炎症作用があり、ニキビの赤みを抑える効果が期待できます。しかし、こってりした油分たっぷりのクリームだと毛穴が詰まる可能性があります。「ノンコメドジェニックテスト済み」のジェルタイプや軽い乳液を選ぶと安心です。
Q3. 朝と夜、どっちに使うべきですか?
A. 両方OKですが、夜が特におすすめです。 寝ている間は肌の修復活動(ターンオーバー)が活発になる時間帯です。このタイミングで「材料」となるパンテノールを補給してあげることで、翌朝の肌の回復をサポートできます。
まとめ
パンテノール(プロビタミンB5)は、単なるブームの成分ではなく、「組織修復」という確かな科学的エビデンスを持つ成分です。
- 肌荒れや赤みがある時は、5%前後の濃度を目安に選ぶ。
- 肌の中で「コエンザイムA」に変わり、壁(バリア)を修復する。
- ワセリンと組み合わせることで、最強のケアになる。
肌が荒れてどうしようもない時は、ぜひ成分表を裏返して「パンテノール」の文字を探してみてください。それが、あなたの肌を救う救世主になるかもしれません。
参考文献
- Proksch, E., & Nissen, H. P. (2002). Dexpanthenol enhances skin barrier repair and reduces inflammation after sodium lauryl sulphate-induced irritation. Journal of dermatological treatment, 13(4), 173-178. [PubMed]
- Camargo, F. B., Jr, et al. (2011). Skin moisturizing effects of panthenol-based formulations. Journal of cosmetic science, 62(4), 361–370. [PubMed]
- Ebner, F., et al. (2002). Topical use of dexpanthenol in skin disorders. American Journal of Clinical Dermatology, 3(6), 427-433. [PubMed]


コメント